サラリーマン技術者の調査レポート

日々の業務で気付いた当たり障りのない技術的なあれこれを綴ります。

IKEA効果

技術的な話ではありませんが、興味深い話だったので記録しておきます。

最近、IKEA効果という言葉を目にする機会が何度かありました。あらためて意識してみると、身のまわりにはIKEA効果で説明できそうなことがいっぱいあります。

ところで、もう放送は終わってしまいましたがNHK「お金と感情と意思決定の白熱教室」~楽しい行動経済学の世界~がとても面白くて毎週みていました。

放送が終わってから気づいたのですが、NHK「お金と感情と意思決定の白熱教室」~楽しい行動経済学の世界~のダン・アリエリー教授は、このIKEA効果のオリジナル論文に登場しています。

ということで、The HBR List 2009 - The IKEA Effect - Harvard Business Reviewをちょこっと翻訳してみました。

IKEA効果 - 労働が愛着を生む

労働には単に有意義な体験というだけでなく、市場化される体験という側面もある。

ホットケーキミックスが発売された当初、主婦たちは、それがあまりにも簡単すぎて自分たちの労働が過小評価されてしまうと考え、それに反発した。メーカーが、後から卵を追加するようにレシピを変更したところ、その売れ行きは劇的に向上した。皮肉なことに、手間を増やして作業をより困難にすることが大好評に繋がったのだ。

同僚であるエール大学のDaniel Mochonとデューク大学のダン・アリエリーとともに実施した調査では、労働すること自体がその成果に対する愛着を強化することを示している。人々は、製品を自分で組み立てたとき(本棚からBuild-a-Bearsまで)その製品を過大評価するようになる(それらの製品はしばしばデキが良くない)。我々は、組み立て式の家具で驚異的な成功を収めているスウェーデン企業に敬意を表して、この現象のことを「IKEA効果」と呼んでいる。

我々の研究の一つで、被験者たちに折り紙を折ってもらい、他の人たちの作品と一緒に並べた自分の作品に対して入札するよう依頼した。 彼らは一貫して自分の折り紙に対してより高い金額を支払うことを厭わなかった。 実際、彼らは自分の素人作品を、高度な技術を持った折り紙の達人の作品と同じだけ高く評価した。

我々はまた、労働の成果がより有益なものほど高い評価を与えるIKEA効果の限界も調査した。 努力を要する作業に失敗したときには、参加者からIKEA効果は消えてしまうのだ。

我々の研究は、消費者がDIYに対してプレミアム価格を支払うことを厭わないことを示唆しているが、次のような重要な注意点もある。 顧客に対して、労働のコストを当然のことと受け入れてもらいたい企業(たとえば、インターネットチャネルを通じてセルフサービスへと誘導したい企業)は、顧客が完遂できないほど難しいタスクを作ってしまわないように注意しなければならない。

最後に、IKEA効果は企業の動力学にとって広範な意味を持っている。 IKEA効果は埋没原価を生み出す一因となる。 それは、マネージャが(ときとして失敗しがちな)内部プロジェクトとNIH症候群(自社開発症候群)に対して労働力を投資し続け、それにより、他の場所で開発された優れたアイデアを内部で開発された(ときとして劣った)アイデアよりも割り引いて評価してしまうことによる。 マネージャは、自分たちが労力を注いだことで愛着を抱くようになったそのアイデアが、同僚や顧客にとってそれほど価値があるわけではないかもしれない、ということを心に留めておくべきである。

ハーバードビジネススクール(ボストン)助教授 マイケル I.ノートン

おわりに

ここで紹介されている事例はNHK「お金と感情と意思決定の白熱教室」~楽しい行動経済学の世界~でも詳しく触れられていました。 もし再放送があればご覧になってはいかがでしょうか。